潮目について調べたよ

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その他

 

今回は潮目について。

 

潮目は釣りのポイントとして有名で、釣りの入門書などにも「潮目があるなら狙ってみよう」などと書いてあると思います。

 

実際に私もショアジギングをする時は潮目をよく狙うんですが、改めて考えてみると潮目については「魚が集まりやすい」事くらいしか知らなかったので調べることにしました。

 

……まあ、今回も釣りには役に立たない記事かもしれませんね。

北原の法則

潮目と魚の関係について調べていくと、ある法則の存在を知りました。

それが「北原の法則」です。

北原の法則とは「魚は潮目付近に集まりやすい」という法則(めっちゃシンプル)のことです。
この法則の発見者である北原多作氏に因んだ名前で呼ばれているようです。

 

明治の終わり頃に発見されたこの法則ですが、ちゃんと現在の漁業でも基本概念になっていますし、「潮目がポイントになる」というのもこの法則が成り立つからなんです。…なんか感慨深いなぁ。

…ま、明治以前でも漁師なら潮目に魚が集まるということは経験的に知っていたと思いますけど、これをちゃんと調査したのは北原氏が初めてだったということでしょう。

 

そして、この法則が活用されているのは漁業だけでなく、釣りにおいても「潮目を狙う」というのはセオリーとなっているのはご存知の通り。

「潮目を狙うのが良い」ということは知っていましたが、まさかその発祥が明治まで遡るとは思いませんでしたね…。

う~ん、次の釣行からは潮目を狙うことを、通ぶって「北原釣法」と呼ぶことにしようかな。(たぶん忘れるけど)

 

どうやって潮目ができるのか?

それでは、次は「潮目はどうしてできるのか」について書いていきましょう。

一口に海水と言っても、場所によって「水の質」が異なっていることはよくあります。

 

例えば、「濁った川の水が流れ込んでいる」ところと「潮の流れが強く、水が澄んでいる」ところでは、パッと見ただけでも「水が違う」と感じるのではないでしょうか。

このように場所によって海水の質が異なるのは普通の事なんですが、質が同じな部分を1つのグループとして見ることを「水塊」と呼びます。

 

海水の場合は塩分濃度・水温・溶存酸素・栄養塩類などが同じところを1つの水塊として扱うのですが、隣り合う2つの水塊(質が異なる2つの水)には、その質が変わる境目になる部分というのが必ずあります。

その境目こそが潮目(潮境)です。(海面で目視できる潮境が潮目です)

 

「2つの水塊の境目と言っても、水ってすぐに混ざるんじゃないの?」と思ったのですが、質が異なる海水というのは意外と簡単には混ざらないようです。…面白いですね。

 

まあ、2つの水塊が少しずつしか混ざらないので、長時間にわたって潮目を見ることができるわけなんでしょうね。

すぐに混ざるようでは、2つの水塊の境目ができないまま1つの水塊になってしまうでしょうし…。

 

潮目の発生には「異なる水塊が接する」という直接的な原因以外にも「海底地形の変化」という間接的な要因も大きく関わることがあります。

海底地形の変化が大きいほど海流の変化も大きくなり、海流が変化する部分では、例えば「流れが強く、酸素が豊富で微生物や栄養が運ばれてくる」水塊と「流れが弱く、酸素が乏しく何も運ばれてこない」水塊に分かれる、などといった具合に地形変化付近を境にして水塊が2つに分かれやすくなります。

 

このように、地形変化が大きい場所は自然と潮目も発生しやすくなるのです。
「地形が変化する所」というのは釣りのポイントとされていますが、これは潮目がポイントであることと同様の理由だったのかもしれませんね。

ついでに書いておきますが、水塊というのは色々な形状のものがあり、専門用語(?)で渦状のものは暖水渦・冷水渦といったり、帯状のものを暖水ストリーマ・冷水ストリーマと呼ぶようです。(周囲よりも暖かいか冷たいかで暖水・冷水にわけるようです)

 

潮目がポイントになる理由

さて、潮目のできるメカニズムはこれくらいにして、次は「なぜ潮目には魚が多いのか」について書いていきます。

潮目がポイントになるということは知っていても、その理由についてはあまり考えたことが無かったのでこれも調べてみました。

 

先に答えを書くと「魚の餌となるプランクトンが豊富になるから」です。

餌が豊富なら多くの魚が集まるのは当然です。
それも食物連鎖の下位に位置するプランクトンが豊富になることで、プランクトンを食べる小魚や小魚を食べる大型魚、小魚を食べる海鳥(加えて魚を獲る漁師・魚を釣りに来た釣り人まで)など様々な生き物が潮目には集まります。

 

問題は、「なぜ潮目ではプランクトンが多くなるのか?」ということです。

気になりますよね?

では、そのメカニズムを説明しましょう。

 

まずは海中の栄養について引用します。

海の生態系では,窒素・リンは基本的には循環利用されない.海での一次生産と物質輸送を図 1.1 に示す.
光合成に必要な光は,太陽から海面に注ぎ,その約 90%は海面によって反射され,約 10%のみが海中に入る.植物プランクトンの光合成による有機物の生成が,呼吸による消費よりも勝る層を有光層と呼ぶ(両者が等しくなる深度は補償深度と呼ばれる).地球上の海の深さの平均は 4000mであるのに対し,補償深度は,よく透き通った外洋水でも約 100mであり,外洋に比べて濁りの大きい沿岸の海では 10~20mである.有光層では,植物プランクトンは栄養塩を取り込み,光合成をおこなって成長,繁殖していく.このため有光層では,栄養塩が枯渇していることが多い.植物プランクトンが死ぬと,海水中を沈降し,光の届かない無光層へと沈んでいき,ここで分解されて無機の窒素・リンへと帰っていく.このため無光層では栄養塩が豊富にある.

 

出典:藤原建紀「1章 海洋環境の特徴」京都大学、https://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/faculty-of-agriculture-jp/8cc76e90751f726979d15b6669828ad6b-85e4539f5efa7d00/pdf/01.pdf(参照 2018-5-7)

 

海中の栄養(栄養塩)というのは植物プランクトンが生息できない(太陽光が届かない)深場の方が多く、浅場にはそれほど栄養があるわけではありません。

通常、栄養が少ない浅場では、植物プランクトンだけでなく、植物プランクトンを捕食する動物プランクトンも増え難く、プランクトンを餌とする小魚やその小魚を餌とする大型魚も集まり難くなります。

 

つまり、栄養が少ない浅場ではプランクトンが増えにくく、栄養が豊富な深場では(植物)プランクトンがいないので、浅場・深場のどちらとも「プランクトンが豊富な状況」とはなりません。

しかし、潮目ができるとこの状況が一変するのです。

 

例として、温度の異なる2つの水塊がぶつかって潮目ができているとしましょう。

2つの水塊が接している部分(潮境)では、冷たい方の水塊は「重い」(高密度)ので暖かい水塊の下へ沈み込む様な流れが生じ、逆に暖かい水塊は「軽い」ので冷たい水塊の上にのぼる流れが生まれます。


イメージ図:水温の差によって上下方向への流れが生じる

 

暖かい水塊による上方向への流れがキーです。
この上昇流によって、水塊底部に溜まっていた栄養塩が植物プランクトンの生息する表層まで運ばれてくるのです。


イメージ図:沈んでいた栄養塩が表層まで運ばれる

 

太陽光が届く水深の栄養分が豊富になることによって、潮目付近ではプランクトンが増殖します。
プランクトンが増えることで、プランクトンを食べる小魚や小魚を食べる大型魚も自然と集まってくるのです。

これが、潮目でプランクトンが増える理由、そして潮目に魚が多くなる理由です。

 

しかし、潮目ができればすぐにプランクトンが増える、というわけではありません。

植物プランクトンが増えるためには、太陽光・栄養塩・水温の3つの要素が揃っている必要があり、また増殖にはある程度の時間(種によって結構違うらしい)が必要になります。

 

なので、必ずしも「潮目=プランクトンが豊富」とはなりませんし、当然「潮目=必ず魚が多い」となることもありませんのでご注意を

 

潮目の中でも狙い目なのは、長時間潮目ができている所か頻繁に潮目ができる所です。

潮目が長い間できているということは、それだけプランクトンが増えている可能性が高いわけです。
こういう所は魚も集まりやすくなっているので一級のポイントになり得ます。

 

そして、同じ釣り場に何度も通っていると「いつも潮目ができる場所」或いは「高確率で潮目ができる場所」というのを発見できることがあります。

こういった所は地形変化によって潮目が発生している場合が多く、そのため魚が居着いたり回遊ルートになりやすいので正に一級のポイントと言えます。

 

…まあ、潮目ができてすぐに魚が釣れるという場合ももちろんあります。

これはどちらかの水塊が元々プランクトンが豊富だったので潮目までプランクトンが沢山運ばれてきて溜まっていたとか、たまたま釣れた魚が回遊してきたタイミングだったなど色々な理由が考えられます。

 

いずれにしても、潮目があるなら狙ってみる方が堅実です。
できればいつも同じ釣り場に通って、潮目ができやすいポイントを見つけておくことをお勧めします。

 

潮目と環境問題

潮目には生き物が集まりやいことについては説明した通りですが、潮目に集まるのは何も生物だけではありません。

 

大小を問わず、海上のゴミなども自然と潮目には集まってしまうのです。

 

つまり、潮目では「ゴミが集まる=ルアーや仕掛けに引っ掛かりやすい」ということも成り立つことがあり、潮目が出ているからといって闇雲にキャストをするとルアー・仕掛けをロストしたりラインを傷つけることになるので注意が必要です。

潮目を発見したらまずは良く観察してゴミの有無を確認しましょう。
もし潮目に大きなゴミがあるようだったら、ゴミが通り過ぎるのを待つか釣り座を移動しましょう。

 

潮目に集まるゴミには切れ藻などの自然由来のものもありますが、もちろん人工的なゴミもあります。

そしてこの海の人工ゴミが環境問題になっているのはご存知の方も多いでしょう。

 

海の人工ゴミの中でも近年特に問題になっているのは微細なプラスチックゴミ(マイクロプラスチック。大きさの定義が曖昧ですが最大でも5mm以下のもの)です。

マイクロプラスチックの中には目に見えないようなサイズのものも多く、これを魚などは餌と一緒に摂食してしまうのです。

 

潮目はプランクトンが豊富になり魚も集まる、という海の食物連鎖では重要な役割を持つのですが、皮肉にもそれが魚類などへのマイクロプラスチック汚染を増進する場にもなってしまっているのです。

マイクロプラスチック汚染の問題は釣りには直接の関係はありませんが、大きな環境問題なので取り上げてみました。

 

潮目の予測

さて、環境問題についてはここまでにして、最後は少し未来の話をしましょうか。

 

皆さんは、仮に「潮目がいつ・どこに発生するのか」を予め知ることができるとしたら、どう思いますか?

 

当然、釣りに行く前に知っておきたいですよね?

まあ、「潮目なんか気にしない」って方もいるとは思いますが、私のようにショアジギングをする釣り人なら「知りたい!」って方は多いのではないでしょうか?

 

もし潮目の発生を事前にしることができたら、「行こうと思ってたポイントだと朝には潮目ができないから、他のポイントにしよう。」といった具合に、釣りのプランを立てる上でもかなり役立つ気がしませんか?

 

潮目に関心があるのは釣り人だけではないようで、「潮目の予測」についての研究も行われています。

 

例えばこれ↓
「VHF海洋短波レーダを用いた潮目予測への適用可能性の検討」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/proce1989/48/0/48_0_1451/_pdf/-char/ja)

 

しかし、残念ながら現在の技術では潮目の発生・消滅の予測をする方法というのは確立されていません。

レーダー観測によって潮目の位置を把握することはできるようですが、潮目発生の予測をするのはそう簡単なことではないようです。

上記リンクの研究でも調べられているのは「潮目発生の予測」ではなく、「潮目移動の予測」です。

 

つまり「○○時にA地点にあった潮目が、□時間後にどこに移動するかを予測できるのか?」ということを調べたものであって、「いつ・どこに発生するのかを予測できるか?」を調べたものではないのです。

ちょっと残念ですね…。

 

しかしながら、潮目の予測技術というのは、釣り・漁業だけでなく海上ゴミ・漂流物などから船舶の安全を確保するためにも有用なので、これからも潮目についての研究は進んでいくことでしょう。

 

もしかしたら、天気予報のように「潮目予報」なんてものが将来できるかもしれませんね。

 

 

おわり

コメント

  1. 匿名 より:

    ありがとうございます。