鉛オモリの影響を知りたいと思った ①

釣りに欠かせないものの一つにオモリがあります。もちろんオモリを使わない釣り方もありますが、様々な釣法・用途に対応するために様々な形状・重量のオモリが販売されています。

オモリの素材としては、鉛・タングステン・樹脂タングステン・亜鉛・ステンレス鋼(SUS)・スズ・鉄などが使われています。

これらの材質の中で、安価で比重も大きい(そして加工もしやすい)鉛製のオモリは、製品の種類も豊富で多くの釣り人に使われています。
しかし、鉛には人体・環境に悪影響があります。このことは以前から知っていましたが、具体的な毒性等を知らなかったので調べてみました。

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鉛とはどんなものか?

鉛は比重11.34の重金属の一種です。融点が327.5℃と低いのに加え、鉛自体も柔らかく加工がしやすいのが特徴です。
紀元前3千年頃のエジプトでも青色陶器の製作に利用されたり、古代ギリシャ・ローマで鉛筆(現在のものとは異なり、単純な鉛の塊)として利用されたりと、古くから人類に使われている金属です。

また、鉛は空気中でも簡単に錆びて変色するので金属特有の光沢は消えてしまいますが、この変色した部分が被膜となって内部は腐食し難くなります。(ある意味では錆に強い!)
水中で使用しても腐食し難い、高比重である、加工も容易、低コスト、と正に釣り用オモリに向いた素材と言えます。

人体への影響

鉛は、カドミウムや水銀等と同様に生物には必要のない元素のようです。これらの元素は生物にとっては毒にしかなりません。

鉛の毒性について引用します。

ヒトの鉛曝露には,鉛を取り扱う産業現場で鉛粒子を肺から吸収する場合と鉛含有物を経口的に消化管から吸収する場合がある.

いずれの場合でも,鉛曝露量が多くなると,造血系(ヘム合成系デルタアミノレブリン酸脱水酵素抑制,貧血等),神経系(末梢神経障害,脳症等),消化器系(疝痛等),腎臓(腎症等)の障害が起こる.

この他,高血圧を含む心血管系影響も報告されている.

1)急性毒性

IPCS によると ,急性中毒の明らかな症状として,感情鈍麻,落着きのなさ,怒りっぽい,注意力散漫,頭痛,筋肉の震え,腹部痙攣,腎障害,幻覚,記憶喪失などがあり,脳障害は血中鉛濃度が成人で 100 ~200 µg/100 ml,小児で 80 ~ 100 µg/100 ml で起こるとし,ATSDR は鉛中毒による急性脳障害では死亡のリスクがあると述べている .

2)慢性毒性

鉛の慢性影響は,通常,継続的な鉛曝露を受けている人に見られ,造血系や神経系障害が特徴的であるが,臨床所見はしばしば明らかでない.筋骨格系やその他の非特異的な自覚症状も多い.高尿酸血症をみるが,貧血,疝痛,腎糸球体障害は重くない.遅発症状は痛風,慢性腎障害,脳障害を特徴とし,高濃度曝露のあと年余の後発症する.しばしば,急性中毒が発症したことが既往症として認められる .

3)発がん性

主として鉛蓄電池,鉛製錬所,あるいはこれらの鉛作業から引退した労働者(男性)を対象に疫学調査が行われ,肺癌 ,全癌 ,胃癌 ,腎癌 の発生率や標準化死亡比の上昇あるいは過剰死亡が報告されている.しかしながら,これらの研究の中には他の発癌物質(特に,肺癌における砒素)との混合曝露も報告されている .これらを踏まえ,IARC は鉛のヒトに対する発がん性を示す限定的な証拠があると評価している .

4)生殖毒性

労働者の鉛中毒として,男性では生殖能力の低下が,女性では受胎能力の低下や流産率の上昇などが古くから報告されている.IPCS は,鉛が男女いずれに対しても生殖毒性を有することについて定性的な証拠はあるが,女性では用量 – 反応関係を推定するためのデータは不十分であると指摘した .

出典:日本産業衛生学会「産業衛生学雑誌 55 巻,2013  鉛および鉛化合物(アルキル鉛化合物を除く)」日本産業衛生学会、http://www.sanei.or.jp/images/contents/290/Lead_and_compounds_OEL_B.pdf(参照2017-11-30)

※IPCSとは、国際化学物質安全性計画(International Programme on Chemical Safety)の略称。
 世界保健機関(WHO)・国連環境計画(UNEP)・国際労働機関(ILO)による化学物質の有害性の評価や試験方法の改善計画(活動)の事。

※ATSDRとは、アメリカの毒性物質疾病登録機関(Agency for Toxic Substances and Disease Registry)の略称。

※IARCとは、国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer)の略称。

上記によると、鉛の毒性は「急性毒性・慢性毒性・発がん性・生殖毒性」の4つに分けられるようです。
では、具体的な数字が出ている急性毒性について考えてみましょう。

子供・成人共に血液100㎖中に100μg(0.1㎎)程の鉛が混入すると、様々な急性中毒症状が発症するようです。

人体の血液量は体重の約8%ということなので、体重70㎏の成人ならば約5.6㎏、体重30㎏の子供ならば約2.4㎏の血液があります
血液の水に対する比重は、男性では1.052~1.060、女性では1.049~1.056となっています。

ここで血液比重を1.05(血液1ℓあたり1.05㎏)として計算すると、体重70㎏で約5.3ℓ、体重30㎏で約2.3ℓの血液量です。
つまり、体重70㎏の人なら血中(体内ではない)に僅か5.3㎎、体重30㎏なら血中に2.3㎎の鉛が混入するだけで脳障害(最悪の場合は死亡)が起きることになります。

経口摂取された鉛は成人ではそのうちの約10%、小児では約40~50%が消化管から吸収されると言われています。そう、大人よりも子供のほうが鉛を吸収しやすいのです。
そして、吸収された鉛は血液中に移行し、肝臓や腎臓に分布した後、最終的には9割以上が骨に蓄積されます。

鉛が体内に吸収される際に、仮に全ての鉛が一時的に血液中に移行するならば、体重70㎏の成人で53㎎(吸収率10%として計算)、体重30㎏の子供ならわずか4.6㎎(吸収率50%として計算)の鉛を誤飲すると急性中毒の脳障害が起こる、という計算になります。

実際にこの計算の通りになるかどうかはわかりません(血液への鉛の移行過程について詳しい資料が発見できず)が、鉛の誤飲による危険性はわかっていただけると思います。
特に幼児・小児は、経口摂取による鉛の吸収率が高いので僅かな量でも急性中毒を起こすリスクが高いです。

小さいお子さんがいるのなら鉛オモリの使用は控える、釣り道具を子供が触れない所に置いておく等の対策をしておきましょう。針とかも危ないし。

長くなったので次回に続きます。
次は野生動物への影響と水中の鉛について書きたいと思います。

あ、最後に一つだけ……
ガン玉や割ビシなどの鉛製オモリを「カミツブシ」って呼びますよね?

この呼び方って必要でしょうか?

この呼び名のせいで、ガン玉を噛んで使ったことがある人ってかなりいるんじゃないでしょうか?

小学生の時に一緒に釣りをしていた友人達はこの手のオモリを噛んで使用していました。もちろん私も何の疑問も持たずに「嚙み潰し」て使用していましたよ、呼び名の通りに。

今では考えられませんが、5gのオモリとかを普通に噛んで使用していました。もし誤飲していたら……考えたくないですね。

もし「カミツブシ」という呼び名でなければ、この手のオモリを噛んで使うことはなかったんじゃないかなぁ、と思います。

これって鉛の誤飲を誘発するような呼び名だと思いませんか?

釣り業界の皆さん、割りビシやガン玉という名前があるんだから、もう「カミツブシ」と呼ぶのはやめません?

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