鈎を考える

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釣り具関係

きっかけはふとした疑問からだった。

「流線って変な形の鈎だよなぁ…。なんでこんな形なんだ?」

ぼ~っと眺めていた雑誌に写る鈎の1つに目がとまった。

もちろん、今までに何度も使ったことのある鈎だから見慣れなかったわけではない。ただ、なかなか釣りに行けずに悶々としていたのが原因なのかはわからないが、妙な形をしたこの鈎のことが気になって仕方なくなってしまったのだ。

※流線と言ってもタナゴ釣り用のものではなく海釣りで使うやつです


そして、小さな疑問が呼び水となって新たな疑問が浮かんだ。

「そもそも、鈎の形状についてちゃんと理解できているんだろうか? もしかして鈎の選び方もわからないまま釣りをしていたんじゃないか……?」

こうなるともう釣りに行くどころではない。
鈎のことを調べなければならないだろう。釣りに行くのはその後だ。

※実際には釣りに行けずに暇だっただけです


大抵、釣りの入門書や雑誌、ネット記事を見れば「○○釣りには△△鈎を使いましょう」などと紹介されているし、釣具店では「道糸に結ぶだけ、○○釣り用仕掛け」などといった仕掛けが売られている。

脱初心者レベルの釣り人なら「あの釣りにはあの鈎、この釣りにはこの鈎」というのをある程度は覚えているのではないかと思う。

確かに、入門書に書かれている仕掛けや市販されている仕掛けを選べばその釣りで使う鈎(仕掛け)としては申し分のないものだろう。それは長年の間蓄積された釣りの経験や知識によって定番化されたものだからだ。


なので

「鈎や仕掛けは色々あって覚えきれない」
「鈎は市販の仕掛けについているものしか使わない」

これでももちろん釣りに支障はない。


仕掛けは釣具店の店員に選んでもらったものでも魚は釣れるし、鈎を結べなくても市販仕掛けを充分に用意すれば1日中釣りを楽しむこともできる。


しかし、脱初心者・中級以上を目指す釣り人なら「自分の求める性質を備えた鈎を選ぶ」ことができるようにならねばならないのではないか。
「○○釣りには△△鈎」こういう風に覚えてしまうのも悪くないが、それだけでは芸がない。

他人には「なんでそんな鈎を使っているんだ?」と馬鹿にされることもあるかもしれないが、「こういう効果があるから□□鈎」という風に自分の望む性質の鈎を選べる方が良くないか。

雑誌の紹介記事を見て買ったものと自分で考えて選んで買ったものとでは、たとえ同じ鈎を選んだとしてもそこには大きな違いがあるはずだ。

そこで、この記事では鈎の種類・形状について改めて確認してみようと思う。
ここに記述していくのはネットや書籍の情報から得た鈎についての知識に加え、それらについての私の考察だ。

多分に個人的見解・メモ感のある内容になりそうだがご容赦願いたい。

鈎についての基本

鈎の部位名

まずは鈎の各部位の呼名を確認しておこう。

見る文献やサイトによって呼名に差異はあるが、ここでは上図の呼名で統一したいと思う。

しかし、このあと各鈎について説明していく時に上図のままでは表現しにくい部位があるので私が勝手に呼名をつけた部位をプラスしておくことにする。

足したのは先曲げ~鈎先にかけての部位である「軸先」、腰曲げ~先曲げにかけての湾曲部位全体を指す「曲げ」の2つ。
これは鈎を「胴」「曲げ」「軸先」と大まかに3つの部位に分ける見方に対応している。

以降はこれらの語句を使って説明していく。

鈎の形状


さて、それでは鈎の形状の違いによってどのような性質の違いが生まれるのか、という基本的な項目を確認しておこう。

鈎先・軸先の角度

鈎先(軸先)の延長線上にチモトが来る形状になっていると一番「刺さりが良くなる」。
鈎先が外に向くと「掛かりが良くなる」「刺さりが悪くなる」「バレやすくなる」「根掛かりが増える」。

鈎先が内向きになると「掛かりが悪くなる」「刺さりが悪くなる」「口に掛かりやすくなる」「バレにくくなる」「根掛かりが減る」。

※「刺さりが良い=鈎が深く刺さる」、「掛かりが良い=鈎掛かりの確率が高い」

鈎先がチモトを向いている場合、ラインで引っ張られる方向と鈎が刺さる方向が同一なのでフッキングの力が鈎先に伝わりやすく、鈎が深く刺さりやすい。

鈎先が外向きになると引っ張られる方向と刺さる方向に差ができるので鈎が深く刺さりにくくなるが、外側に開いた鈎先が魚に触れる確率=鈎掛かりの確率が上がるというメリットがある。しかし、根掛かりが増えるというデメリットがある。

これに対して、鈎先が内向きになるとフッキングパワーのロスによって刺さりが悪くなり、鈎先が魚に触れづらくなり掛かりが悪くなってしまうので良いところが全く無いように感じるかもしれないが、この鈎は後述するネムリ鈎と同様の特徴、根掛かりが少ない・鈎が魚の口に掛かりやすくなるという性質がある。

鈎の飲み込まれを防ぎやすいのでキャッチアンドリリースをよくする場合にはこのタイプが望ましい。

そして、軸先の角度はバレやすさにも影響を与える。軸先が外に開いていると魚が鈎から外れやすくなり、逆に内側に閉じていれば外れにくくなる。

サイズ

同じ銘柄の鈎なら大きくなるにしたがって「頑丈になる」「重くなる」「吸い込みが悪くなる」「刺さりが悪くなる」「根掛かりが増える」「掛かりが良くなる」

鈎のサイズが大きくなれば当然軸は太くなり頑丈になるが、その分刺さりは悪くなる。そして、重量が増えることでエサを自然に漂わせることが難しくなるうえ、魚の吸い込みも悪くなる。

ただ、大きくなることで単純な鈎掛かりの確率は増える(魚の口に入る限り)。

太さ

同じ形状の鈎なら軸が太くなるにしたがって「頑丈になる」「重くなる」「刺さりが悪くなる」

軸が太くなればその分鈎は頑丈になる。ただ、軸が太くなるので刺さりが悪くなり、自重が増えるというデメリットがある。

フトコロの幅

フトコロの幅以外(曲げ部以外)の形状が同じ鈎がある場合、フトコロの広い鈎は「掛かりが良くなる」「バレにくくなる」「吸い込みが悪くなる」「根掛かりが増える」。

フトコロの幅が狭くなると鈎がスマートになることで掛かりは悪くなるが、魚の吸い込みは良くなる。そして、適度な範囲でフトコロが狭くなる分には刺さりが良くなる。

ただし、幅が狭くなりすぎると魚の口の硬い所(歯が生えた部分など)に鈎掛かりすることが増える。こうなると鈎が深く刺さる確率が下がるのでバレやすくなる。

Aは鈎の刺さる方向
Bはフッキングの力の方向
CはAとBの方向の差を表す角度

Cが0°に近いほどフッキングの力が効率よく鈎先に伝わりやすい。
フトコロを狭くした鈎はこの角度Cが小さくなるので刺さりは良くなる。反面、フトコロが狭くなることで掛かりは悪くなる。

そして、フトコロの幅はエサの選択肢にも影響する。厚みのある身エサやオキアミ等を使う場合、フトコロの狭すぎる鈎ではほとんど鈎掛かりしない。なので、必然的に鈎の選択は使用するエサによっても影響される。


胴の長さ

軸先と曲げの形状が同じで胴の長さだけが異なる鈎の場合、胴が長くなると「バレにくくなる」「刺さりが良くなる」

基本的に鈎先(軸先)が内側を向いた胴長の鈎というのは販売されていないので、一般的には胴長になれば「刺さりが良くなる」と言える。

なお、胴長の鈎は胴短の鈎よりも吸い込みが良いと言われることがある。
胴の長さ以外の寸法が同じ鈎の場合を比較した時、胴長になるとその分重量も増えることになり、それによって吸い込みが悪くなるような気がするが本当のところは私にはわからない。

ただ、「釣りの科学」(森秀人、講談社)によると胴長の鈎は胴短のものよりも魚が吸引する時に鈎が上を向きやすく、そのためしっかりと鈎掛かりしやすいのでバレにくくなるとされている。

以下がその理屈だ。

静止状態にあった鈎が魚に吸い込まれる時、慣性の法則によって重い部分よりも先に軽い部分から動き出す(吸い込まれていく)ことになる。

鈎を胴~腰曲げと軸先~先曲げの2つに分けて考えると、軸先側の方が軽い。
魚に吸い込まれる時、軽い部分である軸先側から吸い込まれることになる。


そして、胴側と軸先側の重量比(重さの差)は胴短鈎よりも胴長鈎の方が大きくなる。
つまり、胴長鈎はより確実に軸先側から吸い込まれることによって鈎が上を向きやすく、それ故にしっかりと鈎掛かりしやすいというわけだ。

(たとえ鈎先が魚の反対側を向いていても吸い込まれる時にくるっと回転して軸先側から吸い込まれることが実験により確認されている)

※いわゆる「噛みつき系」のバイトをしてくる魚にはこの理屈は当てはまらないので注意が必要

曲げの形状


曲げの形状はバレやすさに影響する。
ここの形状が掛かった魚をキープする能力に直結するからだ。

しかし、バレやすさというのは曲げの形状以外にもカエシの有無・鈎先部の長さ・鈎先部の形状と角度・軸の太さ・・・などの要素が複雑に絡みあって決まるのでわかりにくい。

魚のバレにくさを考える時は鈎にオモリをぶら下げると想像しやすい。
このオモリの位置(だいたい曲げの頂点)が魚をホールドするベストポジションということになり、オモリからチモトへの延長線がラインに引っ張られる方向ということになる。

この状態で軸先への角度や距離、鈎先の形状、曲げの形状などを総合して考えることでバレにくさをある程度推測できる。
バレやすさを考える時にはこの位置から鈎先まで魚が移動しやすいかどうかを考えればよい。

曲げの頂点から鈎先への角度が緩いものや単純に曲げから鈎先までの距離が短いもの、カエシのないものは鈎先まで魚が移動しやすいのでバレやすいと言える。

図上のxはオモリをぶら下げた時の垂直線に対する軸先の角度、yは垂直線に対する先曲がりの角度だ。(どちらの角度も大まかなもの)

基本的にはyは0°に近くなるほどに、xはマイナス?(表現があっているかわからない。この図では赤い点線が右下がりになる時)になるほどバレにくくなる。

また、一般的に曲げに角があるような形状の鈎は、角になっている部分に魚(の鈎掛かり部)がホールドされやすくバラシが少なくなる。(角があることで上図のyが鋭角になるため)
一方、曲げに角が無く滑らかな曲線状になっているものは、魚がホールドされ難く動きやすいのでバラシが増えてしまう。

そして、たとえバレにくい理想的な形状の鈎を使っていたとしても釣る魚に対して鈎が小さかったり軸が細いと当然バレやすくなってしまう。また、使用中の鈎は根掛かりや魚を釣ることでも状態が変わってくるので釣りをしている時の鈎のチェックも欠かすことはできない。

魚のバラシを減らすためには店頭でのチェックと釣り場でのチェックという2つの作業が欠かせない。

貫通力アップ(摩擦低減)を謳ったコーティングを施してあるものも魚が鈎先へと移動しやすくなるのでバラシが増えてしまうのではないかと思うが、実際のところはどれ程の差があるのかはわからない。

これで鈎の形状による性質の違いについて大まかには列挙できたと思う。これ以外にも重さや色、コーティング、カエシの形状と有無などの違いによる差もあるだろうが、面倒臭いしよくわからないのでパスだ。

特にコーティングは鈎メーカーにとっては企業秘密のようで、メーカーのホームページでもふんわりとした説明しかされていない。
見たところコーティングは基本的に防錆・抵抗減・鈎先の保護?等の目的で施されているようだが、どの鈎にどういったコーティングがされているのかがわからない。

まあ、これは本当に鈎にこだわりたい釣人以外は特に気にしなくても問題はないと思う。私の様な「違いのわからん釣人」は各社の努力・技術によって生み出された恩恵をただただ享受するだけだ。

鈎ごとの特徴


今度は市販されている鈎について、それぞれのタイプがどのような特徴を持ったものなのか考えていこう。

流線

流線の形状はよく見てみるとけっこう変わっている。軸が胴のところで外側に反っているのが特徴的だ。
他の鈎には見られない反りの部分がこの鈎のキモなのだろうが、どうしてこのような形になっているのかがよくわからなかった。もしかしたら釣り人にとっては常識なのかもしれないが、私は知らなかったので調べてみたが良い資料が見つからなかった。

資料が見つからないのでは仕方がない。自分で考えてみることにしよう。
この鈎の形状は以下の要素を満たすために考えられたものなのではないかと仮定した。

  1. キスやカレイなどの口の小さな魚を釣るのに向いていること
  2. 置き竿の釣り、あるいは一荷を狙う釣り方で使うのでアワセを入れなくても鈎掛かりしてくれる方が良い
  3. ゴカイなどの長いエサをつけやすいこと
  4. 数釣りに向いたものであること

では、これらの要素を満たす鈎の形状を考えてみよう。

①についてはフトコロを狭くすることで、③と④の要素については胴長にすることで対応できる。(胴長にすることで魚の口から鈎を外しやすくなるので数釣りに向いている。加えて、胴が長ければフグなどにハリスを切られるのを防ぐ効果もある。)

そして、②に関しては通常は「開いた鈎」にすることで対応するのではないだろうか。
※開いた鈎というのは、鈎先~胴の幅がフトコロの幅と同等以上になっているものを指しています

私の挙げた要素を備えた鈎をイラストにするとこう(↓)だ。流線鈎のイラストもあわせて掲載する。

どうだろうか。
私の考えた鈎だとキス鈎(胴長のJ型鈎)のような形にはなるが、決して流線鈎のような形は思い浮かばない気がする。つまり、何かの要素が足りないか間違っているに違いない。

……そうだ、加えるべき要素を1つ忘れていた。

  • 遠投の釣りでの使用に向いていること

これだ。
この鈎は主に投げ釣りで使われるのだから、釣人から遠く離れた位置でそのポテンシャルを発揮してくれるものでないといけない。

逆に言うと、「遠投向きである」という要素を抜きにしてもキス鈎のような形になるということは、キス鈎というのは遠投の釣り全般には適していない形状だと考えることができるかもしれない。

一般的に遠投釣りに向いた鈎というのは「鈎先がチモトの方向に向いた鈎」だ。これは鈎が刺さる方向と鈎がラインに引っ張られる方向の差が少ないほどフッキングパワーのロスが少なくなるからだ。
ただ、この様な鈎は貫通力は優れるが、鈎掛かりが悪くなる傾向があり鈎掛かりの確率が低くなるデメリットがある。

さて、もう一度流線鈎に求められる要素をまとめてみよう。

  1. キスやカレイなどの口の小さな魚を釣るのに向いていること
  2. 置き竿の釣りで、あるいは一荷を狙う釣り方で使うのでアワセを入れなくても鈎掛かりしてくれる方が良い
  3. ゴカイなどの長いエサをつけやすいこと
  4. 数釣りに向いたものであること
  5. 遠投の釣りでの使用に向いていること

これらを満たす鈎の形状を考えてみたが、私には上手く形にすることができなかった。
何故かというと、②の「アワセなくてもよい(掛かりが良い)」という要素と⑤の「遠投釣りに向く(刺さりが良い)」という2つの相反する要素を備えた形状を思い浮かばなかったからだ。

もう一度流線鈎の形状を見てみよう。

改めて見てみると鈎が「開いた」印象は受けない。
確かに軸先は開き気味になってはいるが、胴の部分が反っているので鈎先の延長線と反りの頂点との幅がかなり狭くなっているのがわかる。

今度は流線鈎・反りを無くした流線鈎・私の考えた鈎(以下J型鈎)を見比べてみよう。

それぞれの鈎の性質を形状から比較してみると以下のようになる。

  • 掛かりやすさ    J型>流線>反りなし
  • 刺さりの良さ    反りなし>流線>J形
  • 根掛かりしにくさ  反りなし>流線>J形

比較してみると流線鈎は3つの内で最も平均的な性質を持っているのがわかる。
こう考えると流線鈎は、少し変わった見た目とは裏腹に中々万能な鈎だと言えそうだ。

改めて見てみると、反りを無くした流線は形状的には秋田袖に近く(丸セイゴにも近い)、J型鈎は袖鈎に近い形状をしている。
もしかしたら、流線鈎は秋田袖と袖鈎の間を埋めるものとしてこれらの鈎よりも後にできたものなのかもしれない。

どう見てもあの反りは自然な形ではなく、何か元になるものから発展したと考える方が自然だろう。たぶん。

余談だが、流線などの胴長鈎は日本では三陸などの地域で発達したものだと言われている。これは、これらの地域は潮流によって良質な漁場が形成されていたことや、寒冷な気候により素潜り漁などの直接魚を獲る漁法がしにくかったことが影響したとされている。

魚が数多く釣れる・寒くて海に入りたくない、という環境が胴長鈎を発展させた根源だと考えるとなかなか面白い。

丸セイゴ

比較的スリムな形状で吸い込みが良く、軸先がチモトに向いているので刺さりも良い。かといって特に掛かりが悪いわけではないので、近距離~遠距離まで幅広く使うことができる数少ない鈎の一つと言ってよいだろう。

絶妙な形状をしているのでほとんどの釣りに使うことができるのではないか。
小さいものはキス釣りにも使えるし、大きなものは大物狙いのブッコミ釣りはもちろんのことメタルジグのアシストフックなどにも使えそうだ。

ただ、この鈎はネットで「根掛かりが少ない」と記述されていることもあるが、個人的にはそういう実感はない。まあ、ゴロタで釣りをしているのが問題なのかもしれないが…。

各メーカー・銘柄ごとに形状が違うので一口に丸セイゴと言っても鈎先を内向きにして根掛かりに強いものや鈎先を開き気味にして鈎掛かりを良くしたものがあるので「丸セイゴなら根掛かりに強い」とだけ覚えていると痛い目にあうかもしれない。重要なのは鈎の性質をその形状からある程度推測できるようになることだ。

伊勢尼

鈎としては一番単純な形状をしているかもしれない。正にJのような形の鈎。
軸は太いがフトコロが広くて「開いた」形状なので掛かりが良い。反面、しっかりとアワセないと深く刺さらない。

そして、この形状の鈎は脆くなるという欠点もあるが、大抵の市販されている鈎は軸を太くすることで十分な強度を持たせている。
基本的には近距離用の鈎だが、鈎先が内側に湾曲しているタイプのものなら比較的刺さりが良くなるので中距離以上でも使えるだろう。

同じタイプにグレ鈎、チヌ鈎、マダイ鈎などがある。それぞれ形状や軸の太さが若干異なるのでこれらの中から自分の求める性質の鈎を選べるようになりたいものだ。

海津

この鈎は広いフトコロを持っているが、同じようにフトコロの広い伊勢尼タイプとは対照的に刺さり重視の形状をしている。
鈎先の延長線上にチモトがくるのでフッキングパワーのロスがない。その分鈎掛かりは悪くなっているのでアワセのタイミングを間違えるとすっぽ抜けてしまうこともあるだろう。

柔らかい竿・ナイロンなどの伸びるラインでもしっかりと鈎が刺さるので、比較的弱いタックルや軟調子でアワセの力が弱いタックルでの釣りでも使えそうだ。しかし、決して使いやすい鈎ではないので使い手を選ぶだろう。

また、チモト部分を覆うようにエサをつけることで根掛かりを減らすことができるかもしれない。しかし、試したことがないので実際のところはわからない。

基本的に小物用の鈎のため小さく細軸のものが多い。
掛かりの良さに重点を置いた形状だが、それ故に強度が弱い。

また、先曲の部分に魚がホールドされる形状になっていて軸先が外を向いているのでバレやすいとも言える。

往々にして袖鈎を使う釣りでは、想定している魚のサイズよりも強い竿を使うことが多いのではないかと思う。これは強い竿(大抵糸も強い)を使うことでやり取りの時間を短くし、バレやすいという特徴を持つ鈎の弱点を補っているのかもしれない。

つまり、タックル全体を通して見た時に掛かりの良さとバレにくさの両立が成り立っているのかもしれない……が、私は小物釣りをあまりしないので実際のところはよくわからない。
そして、当然ながらこの鈎は近距離の釣りでよく使われる。

秋田袖

袖鈎を胴長にし、さらに刺さりを良くした形状。
流線鈎の胴の反りを無くしたものとほぼ同一と言ってよい。

イソメなどの長細いエサを食べる口の小さな魚を釣ることや、根掛かりしにくいので投げ釣り等に向いている。
流線よりも刺さりが良いので「遠距離かつ自分で掛けていく」ような釣り方をするならこの鈎だろう。

形状的に同径の袖鈎よりも強度はあるだろう。こちらの方が鈎が伸びることは少ないはずだ。

ハゲ鈎

これも1、2を争うほど変わった形状の鈎だ。
全体の形状を見ると軸先が大きく開いた鈎(フトコロが広い鈎)だが、鈎先だけは内向き(ネムリ)になっている。

なぜこのような形状になっているのかというと、当然対象魚に合わせた結果だ。

カワハギと言えばエサ取り名人。
おちょぼ口が特徴的だが、あの口が結構硬い。そして、厄介なことにあの小さな口の中には鋭い歯まで隠し持っている。

エサの食べ方は「突っつくように」という形容がピッタリくる。

この様な特徴をふまえた上で「掛かりの良い鈎」を目指して生み出されたのがハゲ鈎なのだろう。

  • 大きく開いた軸先によって鈎掛かり確率を高める
  • 硬い口に鈎がしっかりと刺さるように鈎先がチモトを向いている
  • 鋭い歯にラインを切られないようにするため、口に掛かりやすくする

たぶんこの3つの条件を満たす鈎として作られたのではないだろうか?
3番目の条件はもしかした副作用なのかもしれないが、「エサ取り名人を数多く掛ける。できればしっかりと。」というのがコンセプトだろう。

この鈎の特徴的な形状は、できるだけ多く掛けたい・なるべくしっかりと刺さるように、という相反した性質を実現させるための折衷案だ。

ただし、この多く掛けしっかり刺すという鈎には

  • 極端に軸先が開いているのでバラシが増える
  • 極端に軸先が開いているので強度が下がる
  • 曲がった鈎先が折れやすい

この3つの欠点がある。
しかし、これらの欠点は、そもそもカワハギ釣りは数釣りであること・鈎を交換しやすい仕掛けを使うこと、によって解消され得る。

カワハギと同様のタイプの口を持つ魚にはフグがいる。
仮に今後クサフグ釣りが流行ることがあれば(たぶんないと思うが)、クサフグ釣り専用鈎はカワハギ鈎か胴長鈎(キス用よりも胴長)になるだろうと思う。

ネムリ(ムツ鈎など)

ネムリは鈎先が内側を向いていることで刺さりが悪く、同時に掛かりも悪いという性質がある。
こう書くと良いところが無いようにも思えてしまうが、この鈎には根掛かりを減らし、魚の口にフッキングしやすくなるという他の鈎にはない特徴がある。

内側を向いた鈎先は良くも悪くも掛かりが悪く、それが根掛かりの防止や鈎の飲み込まれ(喉奥での鈎掛かり等)の防止に役立つのだ。
また、内向きの鈎先にはバラシの防止やエサの脱落を減らす効果も期待できる。

以上を踏まえて考えると、この鈎はキャスティング系のエサ釣り、根掛かりをするような場所でのボトム狙いの釣り、ある程度仕掛けを放置する釣り、リリースすることを前提とした釣り等に向いていることになる。

余談だが、メタルジグのアシストフックにネムリ鈎を使うのはやめておこう。

「もうお前を離しはしない…!」

こう言っているかのように鈎がジグを抱えてしまうのだ。こうなるとなかなか外れないので厄介だ。当然、この時にアタリがあっても鈎掛かりすることはない。

根掛かりを少なくできるのではないかと思って試してみたが、デメリットの方が遥かに大きかった。

ヒネリ

ヒネリは鈎を掛けやすくするためのもの。だから基本的に掛かりの良さ重視の形状の鈎にしか使われていない。
魚の口内で鈎が倒れてしまっても鈎先が出っ張っているので掛かりが良くなる。
刺さりは一段と悪くなるので基本的にはアワセの力が伝わりやすい近距離の釣りに使用される。

ネットの情報では「ヒネリがあると鈎が深く刺さる」というものもある。これが本当だとすると大物狙いの投げ釣り用の鈎には全てヒネリが入っていてもおかしくないはずだが、実際にはそうではない。ヒネリはあくまでも鈎掛かりする確率を高めるためのものだ。
しっかりと鈎掛かりした後のバラシの確率がヒネリの有無によって左右されるかはわからない。

また、考え方によってはチャンスの少ない大物釣りでは鈎掛かりしない方が下手に浅掛かりするよりもましなのかもしれない。鈎掛かりしないだけならもう一度喰ってくる可能性があるが、鈎掛かりした後にバラシてしまうともう喰ってこないからだ。

こう考えると大物を狙う時はヒネリのない鈎が良いのではないだろうか?

しかし、大物が次回のチャンスをくれるとは限らず、それならば鈎掛かりする可能性を高めた方が良いという考え方もできる。

こういった考え方一つでも釣り人によって鈎の選択が変わってくることがわかると思う。
だから、「○○釣りには○○鈎」という考え方では釣りを深く楽しむことができないのではないだろうか?

さて、それぞれの鈎の性質についてはここまでにして、そろそろ記事を終えることにしよう。
紹介したもの以外の形状の鈎もあるので一度自身で色々な鈎を調べてみることをお勧めする。

特にマス鈎などは色々な形状のものがあって面白い。自分の求める鈎を正しく選択することができるのなら鈎選びに困ることはないのではないかと思える程のラインナップだ。

こういった鈎を海釣りに使ってみるのも悪くないかもしれない。…サイズは選べないけれども。

今回の記事を書くことは私にとっても中々ためになった。
今まではテキトーだった鈎選びだが、今後は選び方の基準ができたように感じる。

今後の私の鈎の選び方、それは……

「フィーリングだっ!!」

おわり

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