タコの隠れ場選び、シンプルだった・・・

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魚のトピックス

 

タコが物陰に隠れる時に、選ぶ隠れ場の色は背景色によって変わるのか?を調べた論文を見つけたので紹介します。

 

どんな所に隠れやすいかを知っておけば、きっとタコ釣りにも役に立つはず……と思ったんですけどねぇ…

単純に○○という理由で選ぶ?

異なる背景色(全7色)の水槽それぞれに、異なる色(全8色)の円筒を隠れ場として入れ、一定時間ごとに「タコがどの色の筒に隠れているのか?」を記録した実験の論文から2ヵ所を抜粋して引用します。

マダコとスナダコの各背景色における異なる色の隠れ場の選択頻度を Table 1 に示した。隠れ場の色毎の選択頻度合計に着目した場合,マダコは高照度下で最も高頻度で選択された隠れ場の色は黒で,赤,橙がそれに次いで高かった。低照度下では黒が最も高く,次いで橙,赤の隠れ場が高頻度で選択された。スナダコの場合,高照度下においてはマダコの結果と同じく黒に対する選択頻度が最も高く,赤,橙がそれに続いた。低照度下では,橙が最も高頻度で選択され,次いで黒,赤が高かった。隠れ場の内と外にいた頻度を比較すると,それらの総数は,マダコの高照度下では 485:446 であり,低照度下では 109:290 であった。また,スナダコでは高照度下で 448:443,低照度下では 118:281 であった。両種とも高照度下に比べ,低照度下における隠れ場要求は低かった。

本実験ではマダコ,スナダコのいずれも,背景色にかかわらず,隠れ場の色として黒,赤,橙を求める傾向が示された。色覚がないとされ,¹⁴⁻¹⁶⁾かつ網膜感度のピーク波長が 475 nm 付近にある²¹⁾マダコの眼には,赤と橙は濃い灰色に見えるはずである。スナダコは色覚を持つ可能性が指摘されているが,²²⁾一般にタコ類は長波長の光に対して感度が低い²¹’²³’²⁴⁾ことから,スナダコが仮に色覚を持っていたとしても,赤と橙はそれぞれ暗い褐色および褐色に見えると考えられる。すなわち,両種のタコはいずれの背景色においても,黒あるいは黒っぽく見える隠れ場を高頻度で選択したもので,隠れ場と背景のコントラストよりも隠れ場そのものの暗さを重要な視覚情報として選択していると考えられる。

出典:公益社団法人 日本水産学会「異なる背景色におけるタコの隠れ場の色選択」J-STAGE、https://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan1932/67/4/67_4_672/_pdf/-char/ja(参照2018-1-8)

この論文によると、マダコやスナダコは背景色にマッチした色の所に隠れるわけではなく、周囲よりも暗い所を隠れ場として選んでいるようです。単純に。

 

実験では黒や赤系色の隠れ場が選ばれることが多かったのですが、これはタコが人間ほど色を見分けることができないので、タコの眼で見た場合に黒っぽく見える所を選んでいるのではないか?と結論付けられています。

 

つまり、自然環境下のタコも白っぽい砂・石が多い所でも黒っぽい所を隠れ場として選ぶ可能性が高いということです。

タコは周囲の環境に応じて体の色を変え、擬態することができるほど「眼が良い」はずですが、隠れ場自体は周囲に馴染む目立たない色を選ぶのではなく単純に黒っぽい色(タコから見た時の黒)を選ぶというのは興味深いですね。

 

浅場や海水の透明度が高い時にサイトフィッシングをする場合、この「タコは黒っぽい所に隠れやすい」ということを心掛けていれば釣果が伸びるかもしれませんね。

海中には意外と障害物が沈んでいるものです。目についた所を虱潰しに探っていくのも一つの手ですが、「他よりも黒い・暗い所を中心に狙ってみる」というのが効率的な方法と言えそうです。

 

私の経験上、タコが隠れているのは白っぽい石の影や海藻の根本であることが多く、「黒っぽい隠れ場を選ぶ」という実験結果とは若干異なる印象があるのですが、水上から見ると白い石でも海底にいるタコの視点から見ると「隠れるのに丁度良い暗がり」になっているということなんでしょう。

 

あと、タコの隠れる海藻は水上から見ても黒っぽくてわかりやすいので「白い砂地に黒っぽい海藻が生えている」といった場所なら迷わず狙ってみてください。きっとタコが隠れているはずです。

色覚は重要ではない?

さて、引用文中でも指摘されているようにマダコやスナダコは赤色を赤と識別することができません。

「赤を識別できないと擬態したり獲物を探すときに不便なんじゃない?」と思いませんか?

 

しかし、意外なことにタコはそこまで不便な思いはしていないかもしれません。


※1feetは大体30cmです

この動画を見てもらえばわかりやすいと思いますが、水中だと赤は減衰しやすい色なんです。

動画だと水深4mを超えたあたりから赤はだんだん灰色っぽく(隣のオレンジとピンクの色が反射して赤っぽく見えるけど…)なっていきます。

そして、深く(太陽光が届かなく)なるにつれてどんどん黒にしか見えなくなります。

 

そう、海底付近を生活圏にしているタコにとっては元々赤という色はそんなに重要な色ではないんです。深い所では赤なのか黒なのかわからないんですから。

例え赤を識別できたとしてもタコにとっては大した違いは無いでしょう。

 

そして、スナダコとは違いマダコは色覚自体が無いので赤以外の色も「モノクロ」でしか認識できません。そんなマダコが擬態を得意としているというのも面白いもんですね。

やっぱり変な生き物だなぁ…

 

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