今回は海釣りのポピュラーターゲット、アジについて
個人的には海釣りを始めた当初に憧れた魚の一種でした。今でもアジが釣れると嬉しいですけどね。
海釣りはルアーフィッシングからスタートしたこともあって、アジ・スズキ・ヒラメなどのルアーで釣れる魚は当時憧れの的。
「アジってルアーで釣れるのか。いいなぁ!」
と思って、手持ちのバスタックルでジグヘッドリグをキャストしていたのを思い出します……。
以前はルアーフィッシングしかやらなかったので、色んな釣り場(主に相模湾側)でアジングをしていました。
どうしてもアジをルアーで釣りたくて有名なアジングポイントまで何度か足を運んだりもしました。
当時は釣行前に天気予報をちゃんと調べるという習慣が全くなかったので、わざわざ千葉までアジングをしに行ったのに着いてみたら大荒れ……とかあったなぁ。
風が強くて釣りするのを諦めてそのまま帰った………いや、確かあれは千葉にドライブに行っただけだったな。
結局、2・3年くらい(他の釣りの合間に)アジングをやってみたものの、1尾のアジも釣ないままでした。
その間、だんだんエギングやショアジギングに熱中しだしてアジングはやらなくなってしまいました。
餌釣りもするようになった今では、専らサビキ釣り(特にぶっこみサビキ)でアジを釣っています。すごく楽な釣りなのでアジを釣ってみたい人にはオススメ。
ま、個人的なアジ釣りについてはこれくらいにして、そろそろ本題に入りましょう。
マアジはどんな魚か?
日本で釣れるアジには、ムロアジやメアジ、シマアジなど様々な種類がいますが、今回はその中でも最もポピュラーな魚であるマアジについて紹介します。
マアジは、南シナ海から北海道の辺りにかけて生息し、小さい内は、オキアミ類やアミ類等の動物プランクトンを食べますが、大きくなるにつれて小型魚を食べるようになります。
「ぜいご(ぜんご)」と呼ばれる特殊な鱗が側線に沿うようにあるのが特徴で、寿命は約5年で最大50cm程まで成長するようです。…50㎝のアジ釣ってみたいなぁ。
成熟(産卵可能になる)には早い個体で1年、遅くて2年掛かるようです。
産卵は冬から初夏頃までに行われ、逸早く産卵に適した水温(18~24℃)になる九州だと3月頃から産卵が始まり、水温の上昇に伴い産卵場は日本沿岸を東・北へと移っていきます。
主な産卵場は東シナ海であり、日本海・太平洋沿岸の産卵場は小規模であるとされています。そのため、マアジの主産卵場に近い長崎県は漁獲量が日本一になっています。
2015年のデータ(出典:政府統計の総合窓口「e-Stat」)だと、日本のマアジ漁獲量の42%を長崎県が占めています。(2位は島根県で17%) 羨ましい…。
また、アジは明るい場所よりも薄暗い場所を好むので、日中は太陽光が届きにくい深場に留まっていることが多く、エサの豊富な浅場には暗くなる夕方~朝にかけてやって来ます。
なので、アジを陸から釣るには夕方から朝にかけての暗い時間帯に釣りをするか、日中なら曇りの日に釣りをしたほうが良いです。(完全に真っ暗なのも良くない)
アジの色
マアジには体色が黒っぽいものと黄色っぽいものがいます。
一般的に「黒い個体は回遊性のアジ」、「黄色い個体は居つきのアジ」であると言われていますが、どうしてわかるのでしょうか?
気になったので調べてみたところ、「クロアジ(黒い個体)・キアジ(黄色い個体)」について書かれた論文を見つけたので引用します。
若狭湾の西部海域で漁獲される中・大型マアジには,クロアジとキアジの2系群があり,これらはつぎに述べる形態,生態および漁況学的特徴で区別される。
- クロアジは体が黒みを帯び,体高が低く,全体としては紡すい形を呈する。キアジでは黒色色素の発達が悪く,体は黄色みを帯び,高くてやや側扁する。
- 耳石中心部の不透明域の幅は両系群 で差があり,クロアジの方が相対的に広い。
- クロアジは生後8ヵ月前後で尾叉体長130mm,体重約30gあまり,生後20ヵ月で体長190mm,体重92g前後になる。キアジの成長はクロアジのそれより遅く,生後14ヵ月で体長135mm,体 重30g,生後26ヵ月で体長180mm,体重80g前後になる。
- いずれの系群でも年間を通じて成熟卵は見られなかったが,クロアジでは6月前後にやや成熟のすすんだ卵巣が認められた。
- クロアジは甲殻類,イカ類および小型魚類を雑食するが,キアジは主に沿岸性の小魚とくにカタクチイワシを主食としている。
- 尾叉体長180~210mm以上のキアジの腹腔中には,条虫の1種(四吻目,花頭条虫)の擬嚢尾虫が寄生するが,クロアジにはこの種の寄生虫が認められなかった。
- クロアジはマアジ資源の主幹であって,主として,巾着網で漁獲され,沖合を南北に季節回遊する。キアジは沿岸域に定着的な生活を送り,定置網で漁獲されるが,その量はクロアジのそれに比していちじるしく少ない。
寄生虫:多くのキアジの腹腔,とくに幽門垂や肝臓 ・胃の表面および腸間部に,黒褐色の薄い皮膜状の嚢(cyst)が付着しており(Fig. 7),この嚢の中には1尾の擬嚢尾虫(cysticercoid)が見い出された。
この虫体は頭部の先端に4個の吸盤をそなえ,四吻目(Tetrarhychidea)の花頭条虫科(Fioricipitidae)に属する。出典:日本水産学会 畔田正格・落合明「若狭湾産マアジの系群に関する研究」J-STAGE、https://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan1932/28/10/28_10_967/_pdf(参照2017-11-6)
上記の内、5・6・7に注目してください。
まず5番。
同じ海域で獲れたクロアジとキアジでも食べているものが違う、と指摘されています。
キアジが、その場に来たカタクチイワシ等しか食べていないということは、回遊性が低いという根拠になりそうです。
次に6番。
キアジには特定の寄生虫がついていて、クロアジにはその寄生虫が居なかったというのも面白いですね。
この寄生虫が、「沿岸部の回遊しない魚に寄生しやすい」という性質を持ったものならばキアジの回遊性の低さ・クロアジの回遊性の高さの根拠になりそうです
……が、ネット上でいくら検索してもこの「花頭条虫科」について詳しく書かれたページが見つかりません。
それどころか、花頭条虫科なるものが存在するのか怪しいです。
「日本寄生虫学会」のデータベースにもその名はありません。
……古い論文(1962年)だからなぁ。名前が変わったのか……間違ってた?
さて、さらに調べてみましょう。
「水産食品の寄生虫検索データベース」によると、マアジの寄生虫としては「クドア・トラチュリ」「ミクロスポリジウム」「テンタクラリア」の3種があるそうです。
この内、テンタクラリアのページを見てみると、この寄生虫が上記引用文中の「頭部の先端に4個の吸盤をそなえ」という特徴を備えていることがわかりました!
たぶん論文で書かれている「四吻目・花頭条虫科の寄生虫」とは、同じ四吻目のテンタクラリアのことだったのではないでしょうか?
そうだとすればテンタクラリアがどんな寄生虫なのかを調べれば、クロアジとキアジの回遊性の違いの根拠になるかもしれません。
……………が、残念ながらテンタクラリアに関しての詳しいページが見つかりませんでした。(英語ならあるかもね)
テンタクラリアはカツオに寄生していることが多いようですが、それだと回遊性の強い魚に寄生しやすいと考えることもできますし……。
クロアジだけに寄生しているのならわかりやすかったのになぁ…。
まあ、クロアジとキアジの生活する環境が大きく異なる、ということの証にはなりそうですけど……。
ちなみにテンタクラリアは人体に害は無いそうです。
最後に7番。
季節に関係なく同じ場所で獲れるキアジに対して、クロアジは獲れる場所が変わるということが指摘されています。
これはクロアジとキアジの回遊性の違いを明確に示し、クロアジは季節によって獲れる場所が変わるので回遊性が高く、どの季節でも同じ場所で獲れるキアジは回遊性が低いと言えます。
これらを根拠として「黄色いアジは居つき。黒いアジは回遊」ということがわかった、ということだったようです。
しかし、まさか寄生虫について色々と調べることになるとは思いませんでした。2つのタイプ分けの根拠を知りたかっただけなのになぁ……。
資源として見る大衆魚アジ
マアジは釣りのターゲットとして人気があるだけでなく、食べ物としても多くの人に好まれる魚です。
マアジと同様に多くの人に好まれるマグロは、近年その資源量減少が深刻になっています。
では、アジの資源量はどうなのでしょうか?
安定した資源量を保っているのか、それとも、マグロと同様に減ってしまっているのか?
アジ釣りファンとして重要なことなので調べました。
(データの出典:e-Stat 政府統計の総合窓口)
図1を見ると、1960年に55万tを超えた漁獲量は、1980年には5万4千t程にまで激減しました。10分の1の量です。
その後、1990年代に30万tまで一時的に回復しましたが、2005年からは15万t~20万t弱で安定しています。
1960年代のピーク後の漁獲量減少は、単純にアジを獲りすぎていたことが原因でしょう。
2000年頃からは漁獲量が安定しているので、現在のアジ漁の仕方を続けるのなら今後もある程度の資源量は守られる、と考えることもできそうです。(大きな環境変化等が無い限り)
ただ、気になるのは中国や韓国の漁獲量です。
韓国のマアジ漁獲量推移の図を引用します。
出典:平成28年度資源評価報告書(ダイジェスト版)、http://abchan.fra.go.jp/digests28/html/2804.html(参照2017-11-6)
図2を見ると、韓国の漁獲量はそれほど多くなく、あまり増減もしていないのがわかります。
この調子で漁獲量が推移するのなら大きな問題はなさそうですね。
そうなると、マアジ資源量の鍵を握るのはやはり中国になるかもしれません。
以前(↓の記事)に調べた太刀魚の資源量には中国が大きく影響していました。
中国は莫大な人口を誇り、年々水産物の漁獲量も増えています。
現在はマアジ漁に力を入れていない(残念ながら詳細なデータ無し)ようですが、将来どうなるかはわかりません。
しかし、幸いマアジの回遊ルート(分布)は日本のEEZ内であることが多いので、違法漁業が行われない限りマアジ資源量は現在の水準で安定するんじゃないかなぁ、と思います。
以上で今回の記事は終わり!
できればアジの豊かな海で末永くアジ釣りを楽しみたい。
そして、アジの開き食べたい!
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