カサゴについて調べたよ

今回は身近な根魚釣りターゲットの「カサゴ」についてあれこれと調べてみました。

いつもの如く釣りに役に立つかどうかはわからないので、あしからず。

意外とレア?

カサゴは魚には珍しく卵胎生(お腹の中で卵から孵化する)だという特徴があります。
身近な魚だからと侮っていましたが、意外にも中々珍しいタイプの魚だったんですね。
(そういえばウミタナゴも卵胎生だったっけ…)

……「だから何?」って感じですが、私は知らなかったので書いておきました。

さて、それではここからが本編です。

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行動範囲

カサゴの行動範囲について、東海大学のHPから引用します。

カサゴは一般的に定着性が強く、行動圏が狭いとされている。標識放流の結果でも、移動距離はおおよそ1km以内であり、縄張りを持っていることも観察されている。

出典:東海大学 「カサゴの生態」東海大学 海洋学部、http://www.scc.u-tokai.ac.jp/~t-horie/yatomi/seitai.html(参照2018-9-27)

※引用元のサイトではカサゴの生態について詳しくまとめられているので、興味のある方はご覧になることをお勧めします。

上記によるとカサゴの行動範囲はとても狭く、移動したとしてもせいぜい1km以内であるようです。
ただし、どのくらいの期間での移動距離なのかは書かれていないので不明ですが、引用元のページの文章から察するに産卵場所への移動も含めて1km圏内であるようです。(間違っていたらすみません)

それにしても行動範囲が1km圏内というのはとても狭いと思いませんか?

仮に20cmのカサゴを身長170cmの人に置き換えてみると、その行動範囲は8.5km圏内ということになります。徒歩2時間、車だと15~20分といったところでしょうか。

……狭い。狭すぎる。

皆さんはどうですか? 8.5km圏内で生活できるか想像してみて下さい。

私は無理です。
……釣りが出来なくなっちゃう。

切実な問題

さて、カサゴの狭すぎる行動範囲というのは釣り人にとってはある問題に繋がります。

問題とは、ずばり「釣り場からカサゴが居なくなり易い」ということです。
これは単純です。カサゴを釣れば釣るほどその釣り場周辺のカサゴは確実に減少するということです。(リリースしない場合)

先程も紹介した通りカサゴの行動範囲は1km以内ですので、「圏外からの入居者」とも呼べるような釣り場に新しく加入してくる個体は少ないのではないか?ということを考えれば「釣ったら釣った分だけ減ってしまう」というのも言い過ぎではないでしょう。

さらに、引用部にも書かれていますが、カサゴは縄張り意識を持つ魚です。

これはその行動範囲の狭さに加え、物陰に隠れる肉食性の魚であるということも大きく関係しているんじゃないかな~? と私は思うんですが……実際はどうなんでしょうかね?

同じ肉食魚であっても青物(ブリなど)の様に常に移動を繰り返す魚は縄張り意識を持っていませんが、文字通り「根につく」根魚は捕食や身の安全のためにより良いテリトリーを確保しようとするのは当然なのかもしれません。

そんな縄張り意識の強いカサゴ……。当然「より良い場所」を棲み処にしている個体ならテリトリーから移動することはほぼ無いでしょうし、仮に「良い場所」を確保できなかった個体がカサゴが激減したエリア(釣り場)まで移動してきたとしても「産卵相手を見つけることが困難≒子孫を残せない」という状況になるのではないでしょうか?

つまり、短期間の内にカサゴが沢山釣られたエリアというのはその後も長期にわたってカサゴの個体数が減ったままになる可能性があるわけです。

これは釣り人(特にカサゴ釣りが好きな人=私も)にとっては大きな問題です。

「あそこは3年前はカサゴがいくらでも釣れた。」というカサゴパラダイスの様な場所があったとしても、今後はカサゴが全く居ないということも起こり得るのです。(恐ろしい~)

そういった事態を避けるためにもカサゴの様な根魚は必要以上の数をキープすることは避け、小さいサイズのものはリリースするように心掛けましょう。

放流による効果

「カサゴは減りやすい資源」

これは釣り人にとっても漁業関係者にとっても変わらない事実です。

そこで現在多くの地域でカサゴの放流が行われ、私の住む神奈川県でも各地で放流がされているようです。(パッと調べただけでも、平塚・横浜・横須賀で放流が行われていました)

しかし、カサゴの行動範囲の狭さから考えると放流の効果は限定的なエリアに留まりそうな気がしますねぇ…。これだと限定されたエリア内でしか個体数が増えないのでは……?

……しかし、よくよく見てみると上記引用元にはこのような記述もありました。

カサゴ成魚の移動範囲は大体1km以内であると報告されている。定着性の強いカサゴにとって生活範囲の狭さが原因となり、他地域の集団との隔離が生じると考えられる。その結果、集団間での繁殖隔離が起こることが懸念され、同一集団内での近親交配が進行することで、やがては種の多様性が損なわれてしまう恐れも考えられる。そうなると、外部環境の変化や病気の蔓延などによって、種の全滅さえ危惧される。

そこで成魚の代わりとなって、それを回避する役目を担っているのが仔魚と考えられる。遊泳力のない仔魚は複雑な海流によって、成魚が行くことのない様々な水域に運ばれる。そこにたどり着くまでに死亡してしまう個体も決して少なくないが、生き残った仔魚は運ばれた先で成長し、新たな子孫を残す。その結果、地域間での遺伝子交流が起こり、遺伝的多様性が保たれ、そのことが種の保全に繋がっていると考えられる。

出典:東海大学 「カサゴの生態」東海大学 海洋学部、http://www.scc.u-tokai.ac.jp/~t-horie/yatomi/seitai.html(参照2018-10-3)

これによると、移動範囲の狭いカサゴであっても遺伝的多様性を保つための仕組みが成り立っているようです。

この中で注目してもらいたいのは「成魚の代わりとなって、それを回避する役目を担っているのが仔魚と考えられる。遊泳力のない仔魚は複雑な海流によって、成魚が行くことのない様々な水域に運ばれる。」という記述。

なんとカサゴは近親交配を避けるための仕組みとして「稚魚が様々な場所に移動する」のです。(可愛い子には旅をさせよ…?)

そして、移動した(運ばれた)先ではあまり移動をせず、狭いテリトリーを作り成長をしていく、と……。

なるほどね~…。

この「稚魚が広範囲に移動して近親交配を避ける」仕組みのおかげでカサゴ放流の効果を広範囲のエリアに与えることができるようです。

だとすると、カサゴの放流をする時は「海流のある場所に稚魚を放流する」か「成熟した・成熟に近い個体を海流ができる場所近くに放流する」と効果的ということが言えそうですね。

…あ、それよりも単純に「釣り人が来ない場所に放流する」方が効果的かも…?親魚が残るから。

共食い

さて、ここまではカサゴの「行動範囲の狭さ」に関連したことを書いてきましたが、次は「縄張り意識」関連の事にいきましょう。

縄張り意識の強さ故か、それとも肉食魚としての本能なのか…カサゴの「共食い」について。

では引用します。

共食いは155例中,68例で、確認され,そのうち33例が噛み付き,35例が飲み込みであり,共倒れによる共食は確認されなかった。試験期間中,疾病や飢餓が原因と思われる斃死は確認されなかった。
共食いの発生状況と,捕食魚,被食魚の全長の関係を図1に示す。捕食魚と被食魚の全長については,共食いが発生した全ての例で捕食魚の方が大きかった。

出典:佐賀県玄海水産振興センター「カサゴの共食い発生に及ぼす全長差の影響」AgriKnowledge、https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010832686.pdf(参照2018-10-3)

この実験は、水槽に体長の異なるカサゴ2尾を1組として入れ、10日間(餌無し)の間に「噛み付きによる死亡(噛み付き)」・「完全に捕食されての死亡(飲み込み)」・「捕食しようとしたが飲み込めずに両者死亡(共倒れ)」という3パターンの共食い事例の発生件数と両カサゴの体長比の関係を調べたものです。

わかりやすく書くと、「カサゴの大きさがどれくらい違うと共食いするの?」ってことを調べた研究です。

これによると、155組の内 68組で「噛み付き」と「飲みこみ」の共食い事例が見られたとのこと。
確率でいうと約44%で共食い事例が発生しています。

これ、かなり高確率ですよ。
なにせほぼ同サイズの組み合わせも含めての数字ですから。

……これだけ共食いが多いとなると、「カサゴを飼いたい。」って方は気を付けないといけませんね。(もしかしてカサゴ飼育では当たり前の知識?)

ただ、引用元では「噛み付き」を「飲み込み」と同様に共食い事例として扱っていますが、果たして全ての「噛み付き」が共食いをしようとして起こったことなのかについては疑問が残ります。

前述したようにカサゴは隠れ場に潜み、縄張り意識を持つ魚です。
そんなカサゴが狭い水槽(隠れ場無し)に2尾入れられたら……喧嘩すると思いませんか?

「ここは俺のテリトリーだぞ!出てけ!」
みたいな感じで、追い払うために噛み付いているだけということもあるんじゃないかと……。

まあ、実際にどうなのかはわかりませんが、小さく弱いカサゴにとって大きく強いカサゴは危険な存在であるということには変わりはなさそうです。

カサゴの世界はなんとも厳しいものなんですねぇ。

では、カサゴのサイズ差と共食いの関係について、もう1カ所を引用します。

全長比別の共食いの発生状況を図3に示す。共食いは捕食魚と被食魚の全長比が1.1-1.2から発生し,その後全長比が大きくなるにつれ発生割合も上昇した。発生した共食いの区分で見ると,全長比が大きくなるにつれ飲み込みの発生割合が概ね増加する傾向にあった。

出典:佐賀県玄海水産振興センター「カサゴの共食い発生に及ぼす全長差の影響」AgriKnowledge、https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010832686.pdf(参照2018-10-1)

注目してもらいたいのは図3のグラフです。

これを見ると、体長比が1.1以上になると「噛み付き」が発生し、なんと体長比1.2以上で「飲み込み」が発生しています。

う~ん、噛み付きはともかく体長比1.2で「飲み込み」とは…すごいですね。
12cmのカサゴが10cmのカサゴを捕食するってことになりますが……よく丸呑みできるな…。

さらに、グラフを見ると体長差が大きくなると共食い事例が発生しやすくなることや、体長比が1.7以上になると必ず共食い事例が発生していること、体長比が1.9以上になると共食い事例の100%が「飲み込み」になることがわかります。

加えて、引用部には記述がありませんが、この実験では「明らかに捕食しようとしたが、飲み込みきれずに吐き出した」という事例も「噛み付き」にカウントされているので、「噛み付き」にカウントされているものでも本質的には捕食しようとしたものもあるようです。

このことも考慮すると、グラフでは一見わかりづらいですが、体長差が大きくなるにつれて「飲み込み」の発生割合が増える傾向にあるということも確かに言えそうですね。

カサゴ同士の体長差が広がると共食いが増える……ということは、大きいカサゴは小さいカサゴを餌としてしか認識していないという可能性も出てきます。(産卵期にどうなるかは不明)

同族であっても関係ない…。
本当にカサゴの世界は弱肉強食ですねぇ…。

さて、肝心なのはカサゴの共食いについての知識をどう釣りに活かすのか? ということですが……

……活かせるのか、これ?
あまり役に立ちそうにないですね……。

ま、小場所で釣りをしていて小カサゴしか釣れないような時は良型カサゴの釣果は望めない可能性が高い…とか、餌が少ない場所で良型のカサゴが釣れたら数釣りは期待できないかもしれない…とかですかね。

う~ん、微妙だなぁ……。

どのエサが好み?

では、最後にカサゴの餌についてもちょっと紹介します。

カサゴの餌の嗜好性について書かれたものから引用します。

胃内容物の種類としては,エビ,カニ類を主とする甲殻類,巻貝,二枚貝などの軟体類,多毛類,棘皮類,魚類,および藻類など,非常に多様なものが周年にわたって出現し,カサゴは摂餌選択性の幅が相当広いことがうかがわれた。その中でも,エビ,カニ類および魚類の捕食率がいずれの月でもかなり高く,カサゴの嗜好性の強いことが示唆された。また,食性の季節的な変化は特に認められないようであった。

出典:日本水産増殖学会 「播磨灘南部沿岸海域におけるカサゴの食性と成熟」J-STAGE、https://www.jstage.jst.go.jp/article/aquaculturesci1953/40/2/40_2_131/_pdf/-char/ja(参照2018-10-3)

これによるとカサゴは色々なものを餌にしているようですが、特に好むのはエビ・カニ・魚類とのこと。

また、餌となっていた魚類はイカナゴ・ハゼ・カレイ・カサゴなどの底物であり、同様にエビ・カニは非遊泳性の種類だったことから、カサゴはこれらの「普段から身近に生息している生き物」を餌として好んでいることがうかがえます。

まあ、これは当然と言えば当然ですが、面白いのは餌にしているのは見事に底に居るものばかりだということ。
カサゴを狙うならボトムだけ狙えば良いということもこういったデータを見れば一目瞭然です。

さらに、図を見ると調査期間(1年)を通してカサゴに最も捕食されているのはカニだということがわかります。
偶々この場所だとこういった結果になっただけという可能性もありますが、この情報を釣りに活かさない手はありません。

カサゴを釣る時は、その釣り場にいる小さめのカニを獲って釣りエサにするんです。
これならカサゴに効くエサを手軽に入手できるわけです。(しかもエサ代も掛からない!)

他の釣りをしている時でも、ちょいとカニを捕まえてカサゴを狙ってみるのもお勧めです。
事前にエサを準備していなくてもおいしいお土産をゲットできます。

だからといって無闇やたらにキープするのは止めましょうね。

……私が釣る分がいなくなってしまいますから。

おわり

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