今回はドイツで入手できる「釣り人の証」など、ドイツの釣りに関する制度の話です。
※ドイツ語のHPも多数参考にしたので間違いがあるかもしれませんのでご注意を。
これぞ正にフィッシングライセンス 「Fischereischein」
ドイツで釣りをするには、他の国にもあるような「フィッシングライセンス」とは違う「釣り免許」とでも呼ぶべきものが必要になります。
この釣り免許はドイツ語で「Fischereischein(又はAngelschein)」というもので、イメージとしては「運転免許証の釣りバージョン」の様なものです。
日本の遊漁券の様に釣りをする時に購入するものではなく、入手するにはある程度の時間・努力が必要になります。
運転免許を取ったことのある人は思い出してみてください。
何度も自動車教習所に通って(合宿の人も)長時間にわたる学科教習・技能教習を受けた後、卒業検定(技能試験)と学科試験に合格してようやく免許を手に入れることができたはずです。
この「Fischereischein」も運転免許と同様です。各地の釣りクラブで最低30時間の釣りに関する教習(各州で内容が若干異なるらしい)を受けた後、年に1・2回行われる試験(Sportfischerprüfung)に合格する必要があります。
教習・試験の費用は約200ユーロ(バーデン=ヴュルテンベルク州の場合)とのことですから、日本円だと26000円程(1ユーロ=130円として)です。
しっかりした知識と釣りをするための免許が手に入るのならそんなに高くはないかも……でも、教習はめんどいなぁ……。
ドイツ人でも長期休暇等にたまにしか釣りをしない、という人は面倒臭い制度の無い外国(EU圏内)まで行って釣りをするようですし……。
教習では、主に以下のようなものについて学びます。
- 魚の一般知識、魚の生態等
- 魚の住んでいる河川や海などについて、汚染の防止方法
- 漁具具の使い方、禁止漁具
- 釣れた魚の扱い方
- 魚や動物、自然保護に関する法律
これらについてみっちりと勉強した後に試験を受けることになります。学科試験の問題は60問(3択問題)で、試験時間は2時間です。
この試験をパスするには60問中45問に正解することが必要です。(上記①~⑤の各分野から12問ずつ出題される。各分野ごとに最低6問の正解が必要)
さらに実技試験として、魚種・釣り方など指定された条件に合致する釣り具・仕掛けを選ぶ(セットする)、という一風変わった試験が用意されています。(例えば、川でトラウトをフライで釣るときの道具はどれ?といったもの)
教習と試験のどちらとも当然ドイツ語で行われます。これがドイツ外から移住してきた人にとってはネックになります。
熱狂的な釣り人でドイツに移住する予定がある人はドイツ語を必死になって勉強して下さい。ドイツでは「ノージャーマン・ノーフィッシング」……です!
一生ものの合格証「Fischerprüfungszeugnis」
試験に合格すると「釣り試験合格証(Fischerprüfungszeugnis)」が手に入ります。この合格証はFischereischein(釣り免許)を申請する際に必要になります。
また、合格証(Fischerprüfungszeugnis)は生涯有効ですが、地域から交付されるFischereischeinは1~10年の有効期限(地域により異なる)があります。
しかし、更新料を払いさえすれば釣り免許は更新することができます。
例えばバーデン=ヴュルテンベルク州の場合、年間8ユーロの税金に手数料(厄介なことに群・都市ごとに金額が異なる)を加えた金額が更新料として必要になります。
釣り免許の更新は必ず1年ごとに行う必要はなく、大抵の場合は1年・5年・10年の更新期間を選べるようです。
どの期間を選ぼうと年間8ユーロの税金(バーデン=ヴュルテンベルク州の場合)が必要になることは変わりませんが、手数料は更新1回で○○ユーロとなっていることが多いので10年間の免許更新をしたほうがお得なようです。
例えば、バーデン=ヴュルテンベルク州の独立市バーデン=バーデンの場合は手数料が10ユーロなので、1年更新は8+10=18ユーロ、5年更新は8×5+10=50ユーロ、10年更新は8×10+10=90ユーロになります。
1年ごとの更新で10年分の更新料を払うと18×10=180ユーロになるので、更新の仕方で10年で90ユーロの差額が出ることになります。大した差ではないけど更新の手間も考えたら5年か10年更新のほうが良さそう……
子供用・外国人用もカバーする豊富なラインナップ
多くの州で子供(16歳未満)は釣り免許を持った大人の同行・監督下ならば釣り免許(Fischereischein)無しで釣りをすることができます。
ただし、州によっては子供用釣り免許(Jugendfischereischein)が必要になることもあります。この子供用免許は自治体に申請すれば簡単に入手できるようです。(教習・試験無し。もちろん費用は掛かる)
ちなみにFischereischein(釣り免許)は14歳から入手できるようです。(釣り試験自体は14歳未満でも受けられる。たぶん)
また、観光や仕事のために一時的にドイツを訪れている人の場合は、ほとんどの州で試験を受けることなく外国人用釣り免許(有効期間が短い。1ヶ月とか)を入手することができます。
しかし、この免許はどの州でも無条件で手に入るというわけではなく、特定の条件を満たすことが必要になる場合もあります。
例えば、デュッセルドルフでは自身の釣り経験を証明するもの(長年の釣りの経験をドイツ語で記した手紙など。たぶん情熱的な文章だと尚良いのではないかと……)が必要だったりします。……変な条件だなぁ。
お馴染みのシステムも
そして、実際に釣りをする時には上記の各種「釣り免許」に加えて、遊漁チケット「Fischereierlaubnisschein(又はAngelkarte)」が必要になります。
このFischereierlaubnisschein(読み方が謎すぎる……)は日本や他国にある遊漁券と同様に、釣りをする場所(水域)に該当するチケットを購入しなければなりません。また、日券・週券・月券・年券、と選ぶことができる点も他国と変わりません。
「釣り免許」に関してもそうだったんですが、Fischereierlaubnisschein(遊漁チケット)についても情報を一括して掲載しているサイト(ドイツ語でも)はあまりないようです。
このあたりの情報が調べ難いことも外国人にとっては厄介ですね。(実際に調べて頭がこんがらがった)
ドイツでは情報網や権威(?)のある地元の釣りクラブに行って色々と聞いたほうが(むしろ入会するほうが)手っ取り早くて良いのかもしれません。ドイツ語わからないとだめだけど……
で? 肝心の釣れる魚は?
ここまで長々とドイツの釣り免許・遊漁券について書いてきました。観光等で一時的にドイツを訪れて釣りをする分には手続きに手間がかからない場合もありますが、ドイツ人やドイツに移住した人にとってはわざわざ「面倒な釣り免許」を取ってまで釣りをしたい、と思えるような魚はいるのでしょうか?
調べてみると以下の魚が釣りの対象になっているようです。(もちろん他にも対象魚はいます)
- ノーザンパイク(Hecht)
- サーモン (Lachs) (アトランティックサーモンとか?)
- ウナギ (Aal)
- コイ (Karpfen)
- トラウト (Forelle) (ブルック・レイク・レインボー等)
- ヨーロピアンパーチ (Barsch)
- パイクパーチ (Zander)
- ヨーロッパオオナマズ (Wels)
- ブリーム (Brassen)
- バーベル (Barbe)
- カワメンタイ (Quappe)
- チャブ (Döbel)
- グレーリング (Äsche)
- デイス (Hasel) (ウグイ)
- オルフェ (Aland) (フナ?)
- ラッド (Rotfeder)
- テンチ (Schleie)
- タラ (Dorsch)
- ニシン (Hering)
- サバ (Makerel)
……まあ、地図でドイツの位置を見れば予想はできるのですが、特に珍しい魚がいるわけではないようです。
どの魚もヨーロッパに広く生息しているもので、「これが釣りたいからドイツに行くんだ!!!」って思えるような魚はいません。(個人的見解です)
たぶんドイツ人にとっても同様で、「釣りは好きだけど、釣り免許を取るのはめんどい。」って人(特に国境付近に住んでいる人)は、隣国で釣りをするんじゃないでしょうか?生息している魚も変わらないですし……。
でも、ドイツ(地元)の自然を愛する釣り人ならば、釣り免許入手の手間など苦にもならないのかもしれませんね。少年時代から釣りが好きって人なら間違いなく釣り免許を取るでしょう。
しかし、大人になった後にちょっと釣りがしたくなった、という人の場合は……まあ、外国に行くでしょうね。
これがドイツ流 「Fangen und Freilassen」
「魚に優しい釣りをしよう」
こう聞いた時にキャッチアンドリリースを連想する人も多いのではないでしょうか?
しかし、意外なことにドイツではキャッチ&リリース(Fangen und Freilassen)は魚にとって残虐な行為(人が楽しむだけを目的として魚を傷つける)であるとされ、基本的にリリースは違法行為になってしまいます。
例外的にリリースOKの場合もありますが、正しい知識がないと知らないうちに法律に違反してしまうこともあるでしょう。
例外的にリリースしなければならないもの
- 既定のサイズに満たない魚
- 繁殖期(禁漁期)の魚
- レッドリストで指定された保護対象の魚
上記を見れば、どれもリリースするべきなのは明白です。
ですが、これ以外の場合にはリリースできないというのは厄介な問題です。
日本だと「釣りは好きだけど釣れた魚は食べない」という人は多いでしょうし、「狙いの魚が釣れたら持って帰るけど、それ以外はリリース」という人も多いはずです。
逆に「釣れた魚は全部持ち帰る!」って人はほとんどいないんじゃないでしょうか?……フグとか毒のある魚もいますしね。
ドイツでもそれは同様のはずで、「釣れた魚をどうしたいか?」「釣りをどう楽しみたいのか?」ってところは個人個人で違うのは当然です。それを一律に法律で縛るのはどうなんでしょうかねぇ……?
もしかしたら「リリース禁止の法律が嫌で海外に行って釣りをする」という人もいるんじゃないでしょうか。
「キャッチ&リリースは残虐なのか?」……確かに、楽しむためだけに魚を釣るという行為は魚にとっては残虐である、という見方もできます。
それは否定できませんが、だからと言ってリリースを犯罪行為だと定めるのは飛躍しすぎなんじゃないかなぁ?……釣り人は釣れる魚を選べませんから。
ま、ドイツでもキャッチ&リリースの是非については色々と議論になっているようですし、もしかしたら法律が改正されることもあるかもしれません。
さて、そろそろ終わりにしましょう。
今回は世界でも珍しいドイツの釣り制度の紹介をしてきましたが、どうだったでしょうか?
「ドイツの釣り免許欲しいっ!ドイツ行く!」ってなった人はいるでしょうか?
個人的には「やっぱり日本でよかった」って感じです。
……ドイツの制度めんどくさすぎぃ。
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